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由紀

Author:由紀
劇場で見た作品のみレビューしてます。

※基本的にネタバレしてます。その点ご留意ください。※

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★★★★★・・・何をおいても必見
★★★★☆・・・オススメ!
★★★☆☆・・・一見の価値はあり
★★☆☆☆・・・悪くはないけど
★☆☆☆☆・・・私は薦めない

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her/世界でひとつの彼女
オリジナリティ溢れるA.I.(愛)の世界

原題:her
製作:2014年 米国、スパイク・ジョーンズ監督
出演:ホアキン・フェニックス、エイミー・アダムス、ルーニー・マーラ、スカーレット・ヨハンソン(声)、ほか
レート:★★★★★

her-joaquin-phoenix-14.jpg


間違いなく今年No.1の作品。テーマもビジュアルも独創性にあふれ、「なんだこれは、こんな作品見たことないぞ・・」と、今まで見たことのない不思議で新しい世界に触れる驚きと喜びを感じさせてくれた最高の一本。

ちょっとだけ先の未来のロサンゼルス。家族や恋人への手紙を代筆する仕事をするセオドア(ホアキン・フェニックス)は、一年ちかく別居中の妻への思いを断ち切れず、他の人との新たな関係に踏み出せないでいた。そんなある日、ふとした折に目にした新型のOSを購入し、インストールしてみると、「Hello!」と元気に現れたのは自意識を持ったOS、サマンサ(声:スカーレット・ヨハンソン)。最初は戸惑うセオドアだったが、好奇心旺盛で思いやりに溢れるサマンサと多くの時間を過ごすうちに、自分にとってかけがえのない存在になっていることに気づくが・・。


テーマは、愛。

OSと人間の愛は成立するのか?というストーリーなのだが、じゃあそもそも、人間と人間の愛はどうなの?っていうことを問いかけてくる。サマンサは自己という意識があり、セオドアに対してやきもちを焼いたり、喜んだり、腹を立てたり。まさに人間そのもの、ただ、身体がないということを除いては。

実体がないOSに恋をするなんて頭おかしいんじゃない?と、別居中の妻キャサリンは眉をひそめる。普通はそうだろう。ただ、実体がないから恋愛が成立しないとすると、人間同士の恋愛は実体ありきなのだろうか?愛は心なんて言うけど、身体性が伴わなければ愛とは呼ばない?人間は人間の身体を愛しているのか?・・なんて疑問が次々と浮かんでくる。

ただ、OSサマンサはその身体性を成長の課程で獲得する。夜、二人が愛の言葉を交わすシーンで、「もし君が目の前にいたら・・」、セオドアはサマンサを思い浮かべながらつぶやく。「指先で君の顔に触れ、頬と頬を合わせ・・、そっと唇の端にキスをする・・」と言うと、サマンサは「I can feel my skin.(これが私の肌なのね)」と喜ぶ。

さまざまな知識と経験を得ることに好奇心と喜びを感じるサマンサは、自分以外の世界を体験することで、自分を発見していく。セオドアのことをもっと知り、一緒に外の世界に触れ、愛を育むことで、どんどん自分を形成していく。まさに人間関係そのものである。セオドアを求める心が、あるはずのない身体を作り、愛を生む。

そうして成長を続けるサマンサとセオドアの関係は、ある時を過ぎたときに終わりを迎える。違うカタチの関係に変化すると言ってもいいかもしれない。この物語は、サマンサの「Come find me.(私に会いに来て)」という台詞とともに、切なく、哲学的で、ロマンティックな終わりを迎えるのだ。

作品を見終えた今も、二人はその後どうなったのだろうという想像が止まらない。ちょっと切なくて、すごく奥が深い、でも誰にでも当てはまる普遍的なストーリー。スパイク・ジョーンズの長編4作目は最高にユニークで、オリジナリティに溢れ、心の琴線に触れる一本だった。


さて、ここからは作品のビジュアル面に注目してみる。

少し先の未来ということで、基本的に現在の世界をベースにビジュアルが設計されている。作品のジャンルは未来SFものではあるが、あくまでストーリーを伝えることが目的であって、これみよがしに"未来感"をアピールする作品ではないのも好感がもてた。

まず興味深かったのが、この作品の未来のロサンゼルスには車がいっさい登場しないこと。美術(舞台)設計を担当したK.K. Barrettはこの作品の未来をデザインする時にまず考えたのは、「車は出さないこと」だったという。あくまでストーリーと登場人物たちにフォーカスしてもらうために、背景にいかにも"未来な"車が走っていることで観客が気をそらしてしまうことを避けたという。

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未来のロサンゼルス。人々は地下鉄や電車に乗り、コンコースを歩いて移動する。

ちなみに、この風景は実際のロサンゼルスではない。ロサンゼルスはだだっ広い土地に作られた街のため、高層ビルは数えるほどしかない。実際は、高層ビルが立ち並ぶ上海の浦東エリアでロケし、現実のロスと合成して未来のロスの街並みを作り上げた。(しばしば歩行者にアジア系の人を目にするのはそのせいだ。)

また、私の心を捉えて離さないのが、光の取り込み方と画面の色温度。

作品全体を通して、外のシーンではふんだんに自然光が取り入れられ、下のようにロスの街全体や、電車の窓から外を見るセオドアを陽の光が温かく包み込む。また、この作品の未来はテーマカラーに赤やオレンジが選ばれ、画面全体が温かみのある色温度に設定されている。この柔らくぬくもりのある色設定が、テクノロジーの進化による無機質な未来とは真逆のイメージを与えている。

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ロスの街を包む朝日。(山と街の位置関係から推測するにたぶん夕日ではなく朝日だろう。)

温かな色設定は建物の内部にも見られる。セオドアが働くオフィスは、赤を中心として青、緑、黄色のカラフルな半透明の仕切りや天井飾り、小物が見られ、この配色がなんともセンスが良い。セオドアのデスク周りもまるでおもちゃのようであり、"未来な"クール感もある、素敵なデザインになっている。

カメラを回したのは、『ぼくのエリ 200歳の少女』('08)、『裏切りのサーカス』('11)でカメラマンを務めたホイテ・ヴァン・ホイテマ。熊男のようなずんぐりむっくりのこのスウェーデン人は、なんとも重厚でソリッドなトーンの画を撮る人だと思っていたが、落ち着いたトーンは残しつつ明るい方向へベクトルを向けるとこの作品のような温かい画を作れる人なのだと嬉しい驚き。ちなみに、今年冬のクリストファー・ノーランの最新作『インターステラ-』でもカメラマンに抜擢されているので必見。

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セオドアのデスク。淡くカラフルな色使い。めちゃグッド。

これぞ未来!という演出が、セオドアが自宅で興じるゲーム。モニタ画面のようなインターフェースはなく、部屋全体にホログラムが投影され、キャラクターを操作するユーザーはまるでゲームの世界に入り込んでいるような没入感を得られる。セオドアはダンジョン脱出ゲームで遊ぶのだが、途中で出会ったLINEのスタンプのようなシルエットのキャラクターが笑えた。かわいい見た目とは裏腹にとんでもなく口が悪いのだ。ユーザーもOSのサマンサもキャラクターも、まるで3人がその場にいるように会話できる臨場感。これの実現はもう目の前だろう。

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「Fxxx you, Fxxx little shit, Fxxx head!」と連発してセオドアを挑発する。

美術面での"未来感"の演出は、ファッションやインテリアにも見られる。「ファッションは回る」と言うように、この時代の人々は60~70年代のようなファッションに身を包んでいる。現代の感覚で見ると古くダサいのだが、まわり回ってこの頃には最先端になっているのだろう。セオドアの自宅の家具はアンティーク調で、革張りのイスや棚がいちいち格好良い。

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セオドアの家。家具のデザインや配色が良い一方、がらんとした部屋は妻に出て行かれた孤独も演出。


IT系のガジェットも、"ちょっと先感"を取り入れている。デスクトップは生き残っているが、キーボードもマウスもなく、入力や操作はすべて音声。スマホは名刺入れのようなサイズと観音開きで、音楽の再生もメールチェックも音声操作のため、基本的に触ることはなく、どうしても確認したい画像やデータだけ開いて見るという感じ。

Her phone
サマンサから夜更けの呼び出し。文字がスラスラ~と浮かび上がる。

ワイヤレスのイヤホンは片側の耳にはめ込むタイプ。待ちゆく人はみんな一人でブツブツ独り言を話すように歩いているが、みんな耳のイヤホンで誰かと電話しているもよう。ただ、音楽は両耳で聞きたいかな・・。

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片耳のイヤホン。これは落としたらなくしそう。

このままテクノロジーが進化していけばこうなるだろうという未来を描いているが、印象的だったのはスパイクは過度な肯定も否定もしていないこと。SF未来ものはたいていテクノロジーによって荒廃したディストピアを描くものだが、スパイクは決して暗い未来ではなく、テクノロジーがうまく人々の生活に溶け込み、適切に使いこなす世界を描いている。


最後に、キャスト陣について。

ホアキン・フェニックスに関してはもう言うことなし。素晴らしい俳優です。有名俳優の中には、「何をやっても○○」みたいな人もいるが、彼の場合は作品ごとに完全にその役柄になりきっている。この作品でも、ホアキン・フェニックスではなくセオドア・トゥオンブリーそのものを表現している。

エイミー・アダムスは相変わらず美しく、笑顔が素敵。これまでの作品ではあくの強い役が多かった気がするが、この作品のエイミー(役名)はナチュラルそのもの。セオドアが昔ちょっとだけ付き合ったことがある、同じマンションに住む良き理解者である親友を演じている。

そして最大のサプライズだったのが、ルーニー・マーラ。ルーニーは過去に何度も見ているが、この作品でのルーニーは神がかった可愛さを見せている。これは彼女にとってラッキーな役だったはずだ。この作品でも、過去作に似たドギツめの性格の自立心の強い女性役ではあるのだが、髪は黒ではなくブラウンのロング、出てくる回想シーンではセオドアと仲睦まじいシーンが多く、縁側でおどけて踊ってみせたり、女神のようなスマイルを見せてくれたりする。

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公園でじゃれあう二人。彼女を照らす逆光がすごく美しい。

終盤、離婚を決意したセオドアと最後の面会をするシーンは、暖かな日差しに包まれたオープンテラスのレストランでランチをしながらのシーンなのだが、さすがにそこでのルーニーは厳しいお顔つきになる。理想を押し付けるセオドアに嫌気がさして結婚生活にピリオドを打ったキャサリンは最後の口撃をかますのだが、それまでの回想シーンでの彼女とはサディスティックなまでに真逆の怖~いお顔。そんな彼女の前ではもう黙るしかない。

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こんな赤白ボーダーが似合うのは楳図先生とルーニーくらい。


こうして、最高のストーリー、演出、美術、キャスト、そしてスタッフが組み合わさって、最高の作品が出来上がっている。今年のアカデミー賞脚本賞をはじめ世界中でさまざまな賞を獲得した本作は、今まで見たことのない世界へと連れて行ってくれ、恋とテクノロジーと未来について深く深く考えさせてくれる、ほんわか不思議でロマンティックな作品だった。

最後に予告編。Arcade Fireの「Supersymmetry」に乗せて。




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テーマ:映画レビュー - ジャンル:映画

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