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由紀

Author:由紀
劇場で見た作品のみレビューしてます。

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それでも夜は明ける
さらけ出された人の心と歴史の暗部、直視せよ

原題:12 Years a Slave
製作:2013年 米国、スティーヴ・マックイーン監督
出演:キウェテル・イジョフォー、マイケル・ファスベンダー、ルピタ・ニョンゴ、ほか
レート:★★★★☆

12-years-a-slave-trailer.jpg

以前、恐ろしい悪夢を見た。

ある日突然、自分の出自を理由に差別を受ける夢だった。夢なので無茶苦茶な話だが、私が何やらキリスト教にまつわる被差別地域の出身であることが会社内で知れ渡り、ある日突然、それまでにこやかに接してくれていた他部署の上司に呼び出される。

上司はいつもの笑顔で私にこう言う。「君、○○出身だったんだってねぇ。いやぁ、私の知り合いにもあそこの出身の人がいるけど、いろいろ大変なんでしょう?」と、言葉を選びながら遠回しに軽蔑の眼差しを向けてくる。

夢の中の私は自分の出身地が差別対象になるなどと考えたこともなく、ただただ困惑し、心細く、言葉にならない感情を覚えた。唯一、隣席の同僚だけが味方についてくれ、社長から差別的な言葉を浴びせられる私を弁護してくれた。

出自を理由に人として生きる権利を否定されるという体験を夢の中とは言え体験し、目が覚めた時は言いようのない不快さを感じたのを今も覚えている。



そんな夢を見たのは、この作品を見て黒人の奴隷の歴史について調べていたからかもしれない。

1841年に「自由黒人」としてニューヨークで家族と幸せに暮らしていた男が、突然、財産も名前も奪われ、奴隷にされてしまうという話。人は生まれながらにして当然人として生きる権利を持っている。そんな考えが社会で通用しなかった時代の話。

「自由黒人」の意味を正確に理解しているかどうかがこの作品を見るための肝だと思うのだが、劇中ではその辺の説明はあまりされていない。当時の奴隷=黒人のイメージが強いが、黒人の中にも自由を保証されていた人間はいたのだ。

19世紀初頭に奴隷の輸入が禁止されてから、国内の奴隷の売買が活発になってしまう。拉致という犯罪行為で奴隷として売られてしまったのが、自由を認められていた主人公のソロモン・ノーサップである。

奴隷の子孫として生まれ育った人々と異なり、生まれながらに自由に生きることができた人間が、財産も名前もすべて奪われてしまう。彼が奴隷としての12年間で味わった恐怖と屈辱は、ほんの一晩の夢の中とはいえ悪夢のような感覚を味わった今の私は、その大きさに途方もない絶望感を感じてしまうのだ。



奴隷制度の負の遺産は現代のアメリカにも残っており、後世に語り継がれていくべき物語として映画の価値は大きい。監督のスティーブ・マックイーンは前作『SHAME -シェイム-』でさらけ出したくない人の心の恥部を描き、今作では社会が覆い隠していたい歴史の暗部を暴いてみせた。

マックイーンは何度かロングショットを用い、観客の目と心をスクリーンに釘付けにさせる。ノーサップが庭の木にロープで吊るされ、窒息しないようつま先立ちの状態で放置されるシーン。南部の湿気を帯びた空気と日差し、青々と茂った緑をバックに、庭を子どもたちが駆けまわっていく。

私たちは、生み出された映像の余白に映る自分の顔を見て、口の中に苦いものを噛みしめるのだ。元々ビジュアルアーティストとして活躍していたマックイーン監督ならではの映像の力をうまく活用した表現方法だ。



第86回アカデミー賞作品賞を獲得した本作だが、授賞式翌日のニュースの見出しは「ディカプリオまたも受賞逃す」。日本でのアカデミー賞のニュースバリューはその程度のものだろうが、それでもディカプリオ君の動向がトップに来るとは腰から砕け落ちるような感覚に襲われた。

たしかに、ワイドショーで流すには黒人奴隷の歴史を描いた映画なんて重すぎる。今回作品賞を獲ってなければ、限定公開されていても不思議ではないマジメ映画。とはいえ、歴史を直視しようとする者だけが本作のメッセージを受け取ることができる、映画史に残る佳作の一本だろう。



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テーマ:映画レビュー - ジャンル:映画

映画 | 15:30:44 | トラックバック(0) | コメント(0)
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