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由紀

Author:由紀
劇場で見た作品のみレビューしてます。

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夢と狂気の王国
宮崎駿が告げた時代の終焉

原題:夢と狂気の王国
製作:2013年 日本、砂田麻美監督
出演:宮崎駿、鈴木敏夫、高畑勲、ほか
レート:★★★☆☆

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実の父の最期を追った『エンディングノート』('11)で高い評価を受けた砂田麻美監督が、スタジオジブリを題材にした監督ドキュメンタリー第2作。

宮崎駿監督の密着ものはこれまでNHKや日テレで何度も見てきた。なので、なぜわざわざ映画にしたのか、1800円を払って見るだけの価値があるか、を検証するつもりで見に行った。


砂田監督がジブリに潜入したのが昨年の秋頃。『風立ちぬ』('13)の制作が進行中だった時期。この作品は『風立ちぬ』のメイキングでもなければ、宮崎駿の密着でもなく、ジブリの中で流れる空気を映像におさめること目的として作られていることがうかがえた。

この作品とテレビの宮崎駿密着ものとの違いは、NHKは公共放送なのでまず分かりやすく、そして決められたテーマ(フレーム)に沿った素材を集めて編集している。「制作に費やした期間5年」、「知られざる苦悩」、「制作の舞台裏」などのフレームがあって、そこに素材を当てはめていく。民放の場合はまずはプロモーション、つまり番宣なので視聴者を惹きつける映像と編集をしてナンボの番組になる。

だがこの作品は、一年間におよぶ取材の中でにじみ出たジブリというアニメスタジオの空気、そしてその空気を作っているメインキャストである宮崎駿、鈴木Pの2人の関係性を炙りだしている(高畑勲は苦情の対象としてちょっとだけ)。フレームありきでも番宣でもない、ドキュメンタリー映画という形でなければ伝えられない映像メッセージが芯に据えられた作品だ。


非常に印象に残った点を3つ。

1. 宮崎吾朗くん、鈴木P、川上くん(鈴木Pに見習いで付いているドワンゴの社長)の3人が、鈴木Pの都内の事務所"れんが屋"で打合せしているシーン。おそらく吾朗くんの次回作の話をしているようだが、どうも吾郎くんが怒って空気が張り詰めている。

吾郎:いやいやいや・・ちょっと待ってよ。「その、あなたのためです」ってね。
鈴木P:ははは。まあね、だから、吾郎くんが言いたいのはね・・。
吾郎:僕が言いたいのは!!
川上:いや、その、あの。
鈴木P:はは。まあ、ちょ、ちょっと待って、僕に話させて。
吾郎:(鈴木Pの制止を聞かずに)僕が言いたいのは!!僕はこの(映画)業界では異端な入り方をしたんですよ。技術も経験もない僕が。いろいろあるなかで、じゃあ何のためにやってきてるかって、それはジブリのためってところが大きいんですよ。それを「これはあなたのためです」なんていう大義をつけて簡単に責任を丸投げしないでよ。
川上:いや、あの、そういうつもりじゃないですよ。そう取られたんでしたら謝りますし、それは僕の本意じゃないです。すみません。
(シーン・・流れる沈黙)
鈴木P:まぁ、なんていうんだろ、風立ちぬにしてもかぐや姫にしてもね、2本とも実際はプロデューサーの僕が2人にやってってお願いして作ったもんなんですよ。2人はずっと嫌だって言っててね。高畑さんなんて8年も断り続けてて。そこを僕が、2人の作るこれらの作品が見てみたいからっていう理由でお願いしたわけ。プロデューサーと監督ってそういうところがあるんだよね。


というようなやりとりのシーンがあった。

おそらく川上くんが吾郎くんに新作の企画を振ったのだろうと思われるが、吾郎くんにとっては作品の内容はともかく、その振られ方に問題があったようだった。吾郎くんは『コクリコ坂から』('11)の時も奥歯が欠けてしまうほど、文字どおり歯を食いしばって作ってたわけで。宮崎駿という一生おろせない十字架を背負ってやっていかなきゃいけない中で、コクリコでそれなりにヒットした今でもその苦しみは一切変わってないんだなってことがうかがえた、ジブリ内にはらんでいる狂気がかいま見えたワンシーンだった(ものづくりの現場にはこのくらいの衝突はあるものだけど)。



2. 次に、この作品の予告編の最期にも入ってるシーンだが、宮崎駿のセリフで、

「人は一人ひとりが幸せになることが目的だっていうね。人は自分が幸せになることが目的だって言うけど。人生って、自分が幸せになるために生きてるの?俺にはそれがどうも納得できないんだよね。俺は一度も幸せだなんて思ったことないもの。」

というのがある。

世界で一番自分というものにオリジナリティがある人が、自分なんかのためなんかじゃなくて、他人のために作ってるという。結局、幸せは自分のことじゃなくて、他人のことで感じるもの、という真実を突きつけるひと言。改めてハッとさせられた。




3. 映画のラスト、9月6日の引退会見の直前のシーンb。会見場の隣の控室で鈴木Pや星野社長ら関係者と出番を待つ宮崎駿。鈴木Pらがソワソワしてる中、一人窓の外を見てる宮崎がふと、「ちょっと」と手招きしてカメラを回している砂田監督を呼ぶ。

彼が見つめるのは窓の外、眼下に広がる住宅街の屋根を眺めながら砂田監督に言う。

「あそこにさ、屋上で緑に水撒きしてるオジサンがいるでしょ。こうやって上から覗かれてるとも知らずに。くくく・・。こうやって街を上から見下ろすと面白いよねぇ。地面を駆けてさ、配管を駆け上がって、この屋根をつたってさ、飛び上がって、街の上空を飛んで、上から街を見下ろしてっていう、そんな映画を作りたいよねぇ。」

と何気なくつぶやくのだが、そのひと言ひと言に過去のすべての作品から当てはまるシーンが挿し込まれる。

「地面を駆けてさ(ナウシカが荒野を走り、サンが森を駆ける)、配管を駆け上がって(パズーがラピュタの筒の中を駆け上がる)、この屋根をつたってさ(ルパンがカリオストロ城の屋根を飛ぶ)、飛び上がって(ポルコが飛び、千尋がハクの背中に乗って)、街の上空を飛んで(ハウルとソフィが空中散歩、二郎の真っ白な飛行機が飛んで)、上から街を見下ろして(キキがほうきに乗って街を見下ろす)っていう、そんな映画を作りたいよねぇ。」


台本も何もない、なんとなくつぶやいたひと言がすべて自分の過去の作品につながってたという運命めいたワンシーン。砂田監督の編集の妙技なのだが、思わず瞳孔が開いてしまった。このシーンだけでもこの作品を見る価値はある。


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テーマ:映画レビュー - ジャンル:映画

映画 | 14:05:06 | トラックバック(0) | コメント(0)
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