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由紀

Author:由紀
劇場で見た作品のみレビューしてます。

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ザ・マスター
想起から想像へ、二つの魂の出逢いと別れ

原題:The Master
製作:2012年 米国、ポール・トーマス・アンダーソン監督
出演:ホアキン・フェニックス、フィリップ・シーモア・ホフマン、エイミー・アダムス、ほか
レート:★★★★★

Freddie-Runs_conv.png

第2次世界大戦が終結し、出征先から帰還したフレディ(ホアキン・フェニックス)は、アルコール依存症になり社会生活に適応できずにいた。そんな時、"ザ・コーズ"という宗教団体の指導者で、信者から"マスター"と呼ばれているドッド(フィリップ・シーモア・ホフマン)に出会う。ドッドは独自のメソッドで人々を悩みから解放し、フレディもドッドのカウンセリングで次第に心の平静を取り戻していく。ドッドは行き場のないフレディをかたわらに置き、2人の絆は深まっていくが・・。

・メッセージ
行き場のない荒れた魂を抱えた獣といかがわしい神が出逢い、求め合う。時は移ろい、二人は別れを選んだ。

前作『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』で舞台となった20世紀初頭のアメリカ。先進国としてはまれな石油産出国として世界の覇権の握った国で、黒い血(石油)による急速な近代工業化に付いて行けず置いてけぼりを食った人間たちが聖書に救いを求めた時代。あれから二つの大戦を経て、大国には再び、戦場の闇で魂を失った人々が溢れ、救済を求めて数多くの新興宗教が勃興していた。そんな時代が本作の舞台となる。

性欲とアルコールに溺れ、写真屋や農夫の仕事も続かず、癇癪をおこしては人と揉める。社会で生きる意味も術も見いだせない男フレディが、ひょんなことから新興宗教団体の指導者ランカスターと出逢う。栄光の勝者であるはずが、拭い去れない傷を負ったフレディは、我が身を覆う闇から魂を解放するというランカスターに惹かれ、ランカスターもまた、偶然見つけた船上パーティーに転がり込み、謎の密造酒を作っては高揚をもたらす欲望と自由を体現したフレディに惹かれていく。

・演出/映像
指導者と弟子、父と子、そして親友同士のようにも取れる二人の男の関係は、65mmフィルムの色鮮やかな映像と前作に続きタッグを組んだジョニー・グリーンウッドの音楽によって、不穏さとロマンティシズムをまとった世界で変化を遂げていく。

前作から舵を切ったクラシックな映像美は、惚れ惚れするほど美しい。すべてのカットがクールで、意味ありげ。にじみ出てくるその古典的な空気がノスタルジーを感じさせてくれる。ジョニー・グリーンウッドの不協和音を伴う音楽はとにかく不気味で、不快で、スクリーンに写る映像を最高に引き立てている。

終盤、ランカスターが新著で、新しいアプローチを示す。"プロセシング"で取っていた「Can you recall?」の"想起"から、「Can you imagine?」の"想像"へ。過去から未来への志向の変化により、やがて二人に別れが訪れる。

果てしなく広がる荒野で、地平線に向かってバイクを走らせ徐々に見えなくなっていく男に向かって「Freddie!」と叫ぶランカスターの表情はどこか寂しげで、どこまでも自由な男への嫉妬のようで、羽ばたいていく子を見守る親のようでもあった。

「さあ帰ろう」と振り返ったところでインしてくるのが、Jo Staffordの『No Other Love』(1950)。ショパンのエチュード『別れの曲』(Étude No. 3 in E, Op. 10)を元に作られたこの曲の雰囲気がなんともウットリさせる。

・キャスト
本作のホアキン・フェニックスの演技はぶっ飛んでいる。『容疑者ホアキン・フェニックス』('10)の悪行とオスカーに対する不遜な態度さえなければ、間違いなく主演男優賞を取っていた。ただ、そんなお行儀の良い男だったらこの役のあの演技はできなかったかもしれない。当初、ジェレミー・レナーがこの役に考えられていたらしいが、もしそうなっていたらまったく別の物語になっていただろう。とにかくこの作品でのホアキンはイッてしまっている。こんな演技は見たことない。

そんなホアキンとがっぷり四つに組み、一歩も引かない横綱相撲を見せてくれたフィリップ・シーモア・ホフマン。相変わらずの変態野郎だ。あの脂肪たっぷりの喉からまとわりつくように出る野太い声、台詞の独特の間(ま)、そしてあの気色悪い笑みをたたえた表情・・、どれを取っても超一流の役者だ。

この二人があまりに強烈なインパクトを放っているため、どうしても霞んでしまっているものの、どっこい同じ土俵で一歩も引けをとらない演技を見せてくれている我らがエイミー・アダムス。男の名声と財産を守りながらのし上がっていこうとする女のド根性を、吸い込まれそうな紺碧の眼力で演じてみせている。しかしこんな美しい38歳って。洗面所における夫ランカスターへの"戒めの手技"は、見ていて腰から崩れ落ちそうになる代物だ。ああ。


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さあ、PTA、次は何を見せてくれるんだ!

次回作の予定は、トマス・ピンチョンの『Inherent Vice』を原作にした作品らしい。'70年代のカリフォルニアを舞台にマリファナ中毒の私立探偵が、秘密組織の活動を探り当て、やがて都市開発にかかわる陰謀に巻き込まれていくというお話。

そもそも『Inherent Vice』の映画化の契約自体は、『ザ・マスター』の製作が暗礁に乗り上げていた2010年に済ませていた。"オラクルの娘"こと映画プロデューサーのミーガン・エリソン(父親がオラクルのラリー・エリソン)の出資により救われて『ザ・マスター』の製作を再開したため、『Inherent Vice』は長年温められていたのだ。

すでに脚色はほぼ完了しており、今年の夏頃から撮影スタートらしい。主演は、当初ロバート・ダウニー・Jrの予定だったらしいが、彼はマーベル・ユニバースに行ったっきり戻ってこれないと言うので(嘘)、なんとホアキン・フェニックスになったという!なので、次回作でもまたこのタッグが見られるということだ。
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テーマ:映画レビュー - ジャンル:映画

映画 | 09:54:56 | トラックバック(0) | コメント(0)
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